漆黒の魅力〜天然漆への情景〜

【漆黒】

その言葉は黒漆を
塗った艶やかな色味を
表す言葉として生まれ

黒という光を吸収する色で
ありながら反射における僅かな
揺らぎや彩りをも含んだ意味合い
を伴っています。

かつての歌人達が、
「ぬばたまの」と枕詞で
その闇の中の情景を導き出していた
ようにいつ時代にも黒の奥底に潜む質感や
微妙な差異を愉しむ繊細な眼が
この国には育まれてきたのでしょう。

またひとことに黒漆と呼ばれるモノでも
天然の漆は生き物のように塗り方や時代
その経年や環境によって表情を変えて
私達を魅了してくれます。

現在、日本の漆の生産は
明治の最盛期に比べると
1/750ほど落ち込み
現在流通している漆の97%は
輸入に頼る形となってしまい
本物の漆に触れる機会というのは
日常生活で皆無に等しいのが現状なのかも
しれません。

国産本漆を主としていた時代の漆器
を暮しの中へと

手に取るたびに漆は語りかけて
くれるでしょう。

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