漆
三重県 伊勢春慶
伊勢春慶は三重県伊勢市において
製造された漆器を指し
その始まりは室町時代まで遡るとされ
伊勢神宮の工匠が御造営の御残材の払い下げを受け
内職として始まった事が伝わっています。
江戸時代から本格的な漆器の製造が始まり
安永2年頃に発行された伊勢の地誌『宮川夜話草』
では伊勢の特産品の一つとしてとりあげられており
昭和30年代頃まで日常の漆器として盛んに作られ
頑丈かつ使いの良い生活雑器として
全国に多く出荷され広く使われていました。
檜材の木地に弁柄や、との粉で下地留めをし
柿渋などで下塗りをしたうえに
春慶漆や朱合漆による上塗りを施し
深い小豆色のような発色が特徴的とします。
また水漏れを防いだり隙間を埋める為に
隅の継ぎに刻苧をして
その頑丈さから 明治期の内国勧業博覧会などで
「粗ナリト謂ヘドモ廉価ニシテ堅固」
という評判を得ています。
複雑な作品は空木と呼ばれる木釘で組み上げ
もっとも盛んに作られた大正時代には
勢田川流域の河崎の両岸に職人や問屋が
多く住み栄えたとされています。
その後、戦時の影響などにより
昭和期に二度の断絶を経た後に
平成15年に有志の呼び掛けにより
再興運動が起こり現在に至ります。