この時季の紫陽花は
人の気(ケ)を帯びて、
なんとも言えぬ色味を
醸し出す。
万葉古来より
その香は詠い継がれてきたが
人の移ろひにその想いを託した
モノでは、かの正岡子規の
「紫陽花や
昨日の誠
今日の嘘」
が先句といえるので
はなかろうか。
少し曇りがちな
湿った朝日が窓辺から差しこむ
黴雨日にはあのイントロが
頭を廻る。
「 濡縁側に花鋏うち捨てられて
畳の目からにじみ出す
花を切るの忘れてます」
サニーデイズサービスの
に収録されている収録されている
「あじさい」は言うまでも無く
名曲であるが、
山紫陽花のように
ひっそり人影に咲く花もある。
唄人羽の「紫陽花」は
線路沿いのあじさいという歌詞からも
それの本歌取りと考えるのは
考えすぎだろうか。
六月の雨の匂いは
君の匂ひでもあり
やはり湿った畳には
心移りのアジサイが
似合うのだ。