とある夏の日
7月は暮れの真昼

四十度を越える強い日差しが
身を刺す中、一時間ほど
長閑な田舎を歩き、辿り着いた先へ
ひとたび足を踏み入れてしまえば
不思議と土間と居間の境に
立つ身にするりと涼やかな風が通る

今頃、我が家(その当時)のコンクリートで
固められ冷房機が止まった部屋は
蒸風呂の如く熱が篭っている事と
想像に難くなく、改めてその構造の違いを
肌で感じ妙に納得した気分になる*1

 

ここは軒は深く、光は低く仄かに暗い*5

 

いわゆる古民家と呼ばれる建物であるが
その建造物の中でも最古にあたる
室町期まで時代は上がり*2

柱は全て栗材にて手斧(ちょうな)で
なぐられた跡が薄らと黒光り*3
鼻にはツンと遺る 土壁の匂いが漂う

五感を澄まし、眼前に注視して
空間にレンズを向けていると

長らく思案を重ねた故に
置き去りにしていた数々の
考えと想いが、ハッと開くが

すぐに頭の隅に追いやり
靴を平たい石の上揃え置き
居間に上がり、周りを見渡してみると
その一室の異様な光景に出会す

恐らく、まだ庶民に

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